アリスと迷いの森からの脱出

 アリスは回答をチェシャ猫に見せました。

「おれが見こんだだけのことはある。正解さ」

 しかし、チェシャ猫はさらに笑みを深めると、すーっと消えていったのでした。 約束が違います。アリスはまだ、白うさぎ行った方向を教えてもらってません。

 アリスはたまらなく叫びました。 「チェシャ猫さん、話が違うわ!」

「おれは教えるとは言ったが、消えないとは言ってないぜ」

 チェシャ猫が消えた場所から、まだ声が聞こえます。  でもじっさいに、まだ教えてもらってません。

 ...いいえ、やっぱりアリスは教えてもらっていたのです。 チェシャ猫の消えた場所をよく見てみると、木の枝に混ざって、猫の尻尾が浮かんでいるのでした。 その尻尾は、ゆらゆらと揺れながら、ある道を示しています。 この道を白うさぎは通っていったのでしょうか。

「チェシャ猫さん、ありがとう」

 アリスは尻尾に向かってお礼を言いましたが、返ってくるのは尻尾のゆればかりです。

「きっと照れ屋さんな猫だったのね。変なことばっかり言ってたけど、助けてくれたもの」

 アリスは、手を振ると白うさぎを見つけるために先へすすんで行きます。

「これで数字は全部わかったわね!どんなパズルでもかかってきなさい!」

 

 三日月のような笑みを浮かべる猫には、やっぱり気づいていないようです。